それには、ちょっとした工夫があります。
スコーンやケーキを甘さ控えめにすると、
実は「生地が膨らみにくい」「焼き色がつきにくい」など、
お菓子作りの中ではちょっとした“壁”があるんです。
甘さ=糖分は、
生地の膨らみや水分保持、
食感や風味にも関わる大切な要素。
例えばイギリスの代表的な
ヴィクトリアサンドウィッチケーキは、
小麦粉:砂糖:バター:卵=1:1:1:1
という“黄金比”でつくられています。
(↓はCambridgeのティールームにて)
でも、それに頼らないお菓子作りをしてみると、
素材の香りがふわっと立ち上がることに気づきました。
小麦、バター、卵、ナッツ、果物…
素材がもつ“やわらかな甘さ”や“香ばしさ”。
それがじんわり広がって、
「甘くないのに、おいしい」
という新しい感覚になるんです。
例えば、日本の小麦粉は精製度が高く、
お米でいえば“白米”、砂糖でいえば“グラニュー糖”。
一方、イギリスの小麦粉は粗めで胚芽も含まれ、
お米でいう“五分づき”、砂糖でいう“きび・てん菜糖”。
さらにスペルト全粒粉は、
“玄米”や“黒糖”のような、より深みある素材感です。
日本の小麦粉は、
バターや砂糖、卵の甘みがダイレクトに伝わるため、
抹茶やカカオ、さつまいもパウダーなど、
“フレーバー”が映えるお菓子になります。
一方、イギリスの小麦は、
素材そのものの香ばしさが前面に出るため、
スパイスやナッツ、チョコチップなどと組み合わせ、
“粉の旨みを味わう”ような菓子文化が
育まれたのかもしれません。
文化(素材)の違いで、
お菓子の発展の仕方が変わっていく——
そこに、
なんだかワクワクする面白さを感じます。
素材を見直し、量を見直し、製法も見直して。
「控えめな甘さでも、ちゃんと満たされる」
そんなお菓子を目指して、日々調整しています。
静かに心とカラダが満たされる。
そんな甘さのスイーツを、これからも。